シラスは大量の火砕流として一気に堆積したため、他の土と混ざることなく厚い地層を形成しました。 一般的な土は、岩石が細かく分解された粉末に植物や微生物などがもたらす作用によって様々な有機物質が混ざったものですが、 シラスはマグマが岩石となる前に粉末となった物質であり、養分を持たない「原始的な土」ともいえるものです。
鹿児島県から宮崎県南部にかけて、最大150メートルもの厚さでシラスが積み重なっている広大なシラス台地。 マグマのエネルギーを秘めたシラスは、住建材として人と環境にやさしい多くの優れた機能があるだけでなく、 ハイテク機器や生命科学の分野においても貴重な役割を果たす新素材として注目を集めています。
シラスは、マグマの超高温で焼成された高純度無機質セラミック物質であることから、「マグマセラミック」とも呼ばれています。 シラスは非晶質の占める割合が60〜80%もあることで、他の火山噴出物とは決定的に異なる極めて特異な性質を持っています。 非晶質の場合は分子構成が不安定で活性化し、環境によっては触媒反応が起きやすくなることから、 消臭・分解、殺菌、イオン化などの機能を発揮すると考えられます。 シラスは非常に細かい微粒子の中に無数の穴が開いた複雑な構造を持っています。 シラスの主成分である珪酸は、除湿剤の主原料でもあり、これによってシラスには優れた調湿機能があります。
また、シラスに含まれるアルミナはガスの吸着性能が高く、シラス粒子中の空洞にニオイや化学物質の分子を吸着します。 人工ではつくることができないこの極めて複雑な構造と成分構成は、マグマセラミック物質シラスだからこそ成しえた奇跡なのです。